Hedda
Schulz, Ursula Georgy、時実 象一訳:
「ケミカル・アブストラクツと
CAS ONLINE の活用法」、日外アソシエーツ、1995.
目次
1. Chemical Abstracts の情報サービス
2. Chemical Abstracts の使い方
3. Chemical Abstracts の調査例
4. オンライン検索
5. STN の CAS データベース
6. REGISTRY ファイル - 辞書検索
7. REGISTRY ファイル - 構造検索
8. CA ファイル
9. Derwent 社の World Patent Index (WPI)
10. その他の CAS データベース
11. Beilstein
12. Gmelin
13. 各ホストのコマンド言語の比較
14. 冊子体とオンライン検索の比較
15. 結論
第 2 版への序文
ドイツ語版 Von CA bis CAS ONLINE が出版されてから 10 年が経ち、また 1988
年に出版された英語版 From CA to CAS ONLINE もまもなく絶版となります。しかしドイツ語版・英語版を問わず多くの読者がいまだにこの本を活用しており、また改訂版の出版を希望しています。しばらく迷った末、ようやく完全な改訂・拡張版を執筆することにしました。私の目的は化学業界の情報担当マネジャーとしての経験を織り込み、初心者にも経験者にも役に立つヒントを提供することにあります。幸い非常に経験の深いサーチャー
Dr. Ursula Georgy を共同執筆者として得ることができたので、さっそく改訂に手をつけることができました。
改訂版の執筆を始めようとしたとき、Chemical Abstracts Service と STN が
1994 年より Derwent 社の World Patent Index を STN に載せるためコマンド言語の改訂を計画しているとの情報を得ました。そこで
STN の機能強化や特許検索についても本書に盛り込むことにしました。
オンライン検索が化学や関連する科学者にとって昔からの夢を現実にする道具であるにも関わらず、多くの人にとってまだまだ遠い存在であるという事実が本書執筆の動機です。ある化学物質が既知であるかどうか、どんな文献に記載されているかを調べるには、単にコンピュータの画面上で化学構造を作図し、検索を命令すればよいのです。検索者は見つかった文献がしばしば自分の手元にないことに失望し、データベースを嫌いになったりします。オンライン検索がややこしかったり自分の思うとおりにならなかったりすると、マニュアル調査に逆戻りし、そこで大切な文献はすべて見つかったと安心します。一般に科学者が冊子体を使って調査をするときは無意識のうちに調査戦略を調整します。概念から出発しても化学物質の名称から出発しても、得られる情報の量にしたがって検索戦略を広げたり狭めたり、あるいは検索語を変更したりします。
オンライン検索ではこのようなことはおこなわれません。オンライン検索では最初の検索語をたよりに目的地をめざすので、まるでトンネルの中を進んでいるようです。もし結果が不適当だったりあまりに高価になりそうだったら、検索式は手間をかけて修正する必要があります。検索語は検索をおこなう前によく調べておくべきです。冊子体の調査の経験を経ることにより、科学者に検索式を作成する能力がついていくのです。そうでないとオンライン検索に非常に費用がかかることになり、さらに適当な結果が得られないために検索から遠ざかってしまうことにもなりかねません。
本書ではそのような問題点の解決法を示しています。次の点に注意してください。
■1. 検索者は系統的な検索式をたてる必要があります。化学者なら Chemical
Abstracts の巻末索引やその他の冊子を使うなかでその方法を習熟することができる。冊子体の調査方法を知らない限り、Chemical
Abstracts Service のオンライン・データベースの検索を上手におこなうのは困難です。
■2. 検索者は検索対象のデータベースの内部構造をよく知っている必要があります。梨の木からリンゴを採ることはできないのは明らかなのに、オンライン検索でこのような過ちを犯す人が多いようです。
本書の前半は冊子体の Chemical Abstracts の構造とその中に隠れている情報をどうやって見つけだすかについて述べています。化学の広い分野について調査例と図を用いて調査戦略について説明しています。
後半では Chemical Abstracts Service のオンライン・データベースについて解説するとともに、化学関連の他のデータベースについても触れています。実例では冊子体の調査とオンライン検索の違いについてもわかるようになっています。
化学者にとっていまやオンライン検索の教養は必須となっています。さらに関連の研究者、エンジニア、環境技術者、医者や毒物学者にとつても欠かすことができません。本書は化学専攻でない研究者にも化学のオンライン検索が理解できることを目指しました。
Hedda Schulz
Ursula georgy