すいすいインターネット



28.8 kbps のモデムのおかげで、今では自分の家でインターネットに接続することは何でもなくなった。そこでひとつ先を目指すには ISDN である INS 64 を導入して高速通信をすることである。INS 64 を入れれば電話、ファックス、インターネットなどを 1 本の電話線で使え、しかもそのうち 2 本までは同時使用でき、その上いばることができる。

昨年 (1995 年) 春、仕事の関係でどうしても自宅に電話から独立したファックスを引きたいと考えたが、なにぶん古いマンションのため追加の電話線が引けないことがわかった。そこで INS 64 を思いついた。INS 64 は 2 本の 64 kbps 線を持ち、アナログ線 (電話、ファックス) も 2 本引くことができる。NTT が秋葉原のラオックスで説明コーナーを開いていたので、そこでいろいろ確認したのち加入することにした。INS 64 を引くには DSU (回線接続装置) と TA (Terminal Adaptor) が必要である。DSU は普通 NTT から買い取るが TA はいろいろ選択の余地がある。私の場合は「電話とファックスを同時に使う」という目的がある。そこでアナログ 2 回線を持つ TA ということで沖電気の PCLINK TA2A を買った。電話局に連絡したら工事に来てくれて簡単に取り付けがすんだ。困ったのは電話番号が変わってしまったことで、年賀状の時期でもないし仕方がないので電話案内で当座をしのぐことにした。順調に電話・ファックスとも使えるようになったが、あるとき突然電話がかからなくなった。事故処理の 113 番に電話すると、「局側に異常がありました」とのこと。このような事故は半年間使って 1 回だけだったが、通常の電話ではこんなことは一切なかったのでやや不安である。また TA に電源を使っているので停電すると電話が使えない。ということは災害時には電話は使えないわけで、別に携帯電話を買った方がいいかなと考慮中である。

さてせっかく INS を導入したのであるからインターネットに入ることにした。秋葉原で相談すると、まず私の PC-9821Ap2 は 1 世代前のパソコンで高速通信はサポートしていないので、RS232C 拡張ボードが必要だという。そこでそれを買ったら今度はそのボードは Windows 95 にはまだ対応していないのだ。やむをえず Windows 3.1 で進めることとした。さて INS 64 は 64 kbps に対応しているから、と思ってインターネット・プロバイダ (IP) に聞いてみると、PCLINK TA2A ではパソコンにボードを追加しない限り非同期の 38.4 kbps しか使えないといわれてしまった。新しく出た NTT (A-Term IT35) や NEC (MN128) の TA は RS232C (シリアル・ポート) 接続の 64 kbps の同期通信をサポートしているのとのことである。しかし半年しか使っていない TA (10 万円近くした) を捨てるにはしのびないので 38.4 kbps でがまんすることにした。

インターネットのソフトウェアとしてはソフトバンク社の「インターネット・オールインワン」を購入した。これにはブラウザ Netscape と TCP/IP ダイヤラー Trumpet Winsock の入っている EUDORA PROがついている。本当は Netscape の Windows 95 版を買おうと思ったのだが、店の人から「それはまだトラブルが多いですよ」といわれたので断念した (他にも前述のボードの問題もあった)。とりあえず全ソフトをインストールはしてみたが、導入ガイドらしいものがまったく付属していない (かなりすごいパッケージですよね) ので次に何をしていいかわからない。ボードの動作確認もしたいのだが、それにはインターネットに接続しなくてはいけない、という「にわとりと卵」の関係になっている。いろいろ考えてまずプロバイダー (IP) を決めることにした。とにかくオンライン・サインアップができてすぐ使えるところということで、共同 VAN を選んだ。「PCLINK で 38.4 kbps が使えますよね」電話で念を押したのはいうまでもない。通常の回線で指定の番号につないだところ、これは随分簡単にいき、クレジット・カード番号を登録すると暫定パスワードが入手でき接続のためのデータもわかった。

そこで「プロバイダー登録」に電話やパスワードを書き込んで Netscape を立ちあげようとすると「winsock.dll が見つかりません」といってくる。たしかこれは Trumpet についていたようなので、確かにあることを確認して、autoexec.bat に Trumpet のパスを書いたらちゃんと立ち上がるようになった。どうして自動的にセットされないのだ! 次には「DNS 項目がありません」といわれた。えっ「DNS」て何だ?(IP のドメイン名と IP Adress) Netscape のマニュアルにはトラブル・シューティングの項がない、と思ったら補足マニュアルにちゃんと出ていた。これを入力してからあらためて Netscape を立ちあげると驚くなかれ Netscape のホーム・ページが表示された。無事インターネットにつながったのである!

38.4 kbps は十分速く、家族でインターネットを楽しんでいる。しかしここまでに秋葉原に出かけること 3 回、電話を 6 回、ファックスでの情報収集 7 件、実働時間 10 時間と容易な道ではなかった。教訓。「楽をしようと思ったら環境がそろうまで待て!」
(1996.1)